定点観測 / 2026-07 記録開始
この町の決定は、
追えるか。
決定は、公開されています。でも議決はHTMLの表、予算はPDF。どれも、そのまま検索や集計に使えるデータ(CSV・API等)ではなく、互いに繋がっていません。 国が定めたデータの標準に、学校給食の献立はある。でも、議会も、議決も、予算も、ありません。乱数で引いた小さな町のひとつでは、意思決定が町の図書館の紙にしか、ありませんでした。
※この「無い」は、公表された標準データセットの一覧を端から端まで読んで確かめた不在です。読み切れる一覧に、その項目が入っていない、という事実です。 個々の町で「探したけれど見つからなかった」こと(=わからない)とは別で、後段の《測っていないこと》で言う〈確認できなかった〉には当たりません。
この記録が言っていないこと:これは特定の議員・自治体を「怠慢だ」と告発するものではありません。 賛否の中身も、決定の是非も評価しません。決定が"市民から追える形か"だけを、同じ物差しで測る健康診断です。 良い決定でも見えなければ「見えない」、悪い決定でも見えれば「見える」。人の善悪と、仕組みの透明性は、別の軸です。
この物差しの前提と範囲。この物差しは『決定は、追える方がよい』という一つの前提の上で動きます。測るのは、その前提のもとでの“追えるか”だけ。前提そのものの是非(追える方がよいのかどうか)は、この物差しの測定対象ではありません。『追えなくてよい』という判断は、この物差しの外側にあり、そこはあなたが決める場所です。
大都市は、公開している。でも、そのまま使えるデータになっておらず、繋がっていない
福岡市(人口約160万)で、意思決定が生まれてから市民に届くまでの6工程を、同じ物差しで測りました。 結果は、きれいに一直線です。公開はすべて◯。機械可読はすべて最低段(L1)。工程どうしの接続はすべて✗。
なぜ福岡市なのか。「大阪や東京でもいいのでは」と思うかもしれません。 東京は特別区、大阪は府と市の二重構造と、大都市のなかでも制度が特殊です。 福岡市は、そうした例外のない標準的な政令指定都市。しかも、給食の献立までCSVで配るなど、オープンデータにはむしろ積極的な市です。“特殊な市”でも“遅れた市”でもなく、進んでいる市でさえ意思決定は追えない。それを確かめるために選びました。 ここで作った物差しは、そのまま他のどの市にも当てられます。
予算のPDFには、その予算を可決した議決へのリンクがありません。 「いくら使うか」は読めても、「それを誰がどう決めたか」へ辿る道が用意されていない。「存在する」と「追える」は、同じではありません。
何を機械可読にするかは、国が決めている
福岡市が給食の献立をCSVで配り、意思決定をPDFで置くのは、市だけの判断ではありません。 国(デジタル庁)が定めた自治体標準データセットに、意思決定が入っていないからです。 ただし標準は“下限”であって“上限”ではありません。標準を超えて議決結果を機械可読で出す自治体も、数えるほどですが在ります(鹿児島県・長浜市・府中市など)。 けれど、それができるのはごく一部。オープンデータに取り組む600超の自治体のうち、議会のデータを出しているのは20ほど、という調査があります(本田正美「地方議会に関わるオープンデータの動向」2019)。多くの町は、標準のかたちのまま止まっています。
標準に「ある」もの(抜粋)
- AED設置箇所
- 介護サービス事業所
- 医療機関
- 文化財
- 観光施設
- イベント
- 食品営業許可
- 学校給食献立情報
- 小中学校通学区域
- ボーリング柱状図
- 都市計画基礎調査
- 調達情報
- 標準的なバス情報
- 支援制度情報
標準に「無い」もの
- 議会
- 議案
- 議決・賛否
- 予算
- 決算
- パブリックコメント
- 審議会
国会には会議録の検索APIがあります。けれど地方議会は各自治体でバラバラに公開され、統一された機械可読の形はありません(横断分析が進まない背景として、これを指摘する研究もあります)。
小さな町を、乱数で引いてみた
狙い撃ちを避けるため、全国の町・村926件から、乱数(seed 20260718)で3つ引きました。誰でも同じseedで、同じ3町を再現できます。そこに浮かんだのは、「小ささ=不透明」とは限らない、という事実でした。
会議録をネット公開(平成19年〜)。議決結果もサイトに。
議会の動画をYouTubeで配信し、議決結果もネットに掲載。ただし逐語の会議録(文字)はネット未公開で、町立図書館で閲覧できます(町の公式サイトに記載)。
公式サイトからは、会議録・議決結果に辿れませんでした(掲載は問い合わせ先の電話番号のみ)。
板倉町(1.4万人)は会議録をネットに、和寒町(3千人)は議会の動画をネットに出しています。3千人の町でも議会をネット配信する一方、人口約500の村では、会議録も議決結果も公式サイトからは辿れませんでした。規模の順ではありません。そして和寒町では、動画では見られても、検索できる逐語の会議録は図書館の紙のまま。人が見れば分かっても、そのまま検索・集計に使えるデータにはなっていない。それが、ここにもあります。
母集団の出典:code4fukui/localgovjp(全国自治体オープンデータ)。町・村は市区町村名の末尾で判定。抽出手順とseedは公開しているので、第三者が同じ結果を再現・検証できます。
ここに、結論は書きません
下の左と右は、どちらも本当のことです。あいだに線を引けるのは、読んだ人だけです。
左は「公開されている/標準にある/読める」。右は「機械可読でない/標準にない/繋がっていない」。それだけです。
では、あなたの町は。
この物差し(6工程)と、乱数で町を引く手順は、公開しています。 福岡市でも、乱数で引いた3町でも、意思決定は同じように「見えにくい」形をしていました。同じ物差しは、あなたの住む町にも当てられます。追えるか、追えないか。確かめられるのは、そこに住む人だけです。
あなたのまちで、確かめてみる6つの問いに答えるだけ・答えはこの画面の中だけ・1〜2分測っていないこと/誤読しないために
- 賛否の中身も、決定の是非も測っていません。測るのは「決定が市民から追える形か」だけ。人物評ではなく、仕組みの健康診断です。
- 「確認できなかった」は「無い」ではありません。各自治体サイトの実物ページから辿れたかを記録しています。別ページにある可能性・後日追加される可能性は排除していません。
- 狙い撃ちを避けています。小さな町は全国から乱数で抽出し、seedを公開しています。特定の自治体を名指しで選んではいません。
- これは自治体の落ち度の話ではありません。意思決定は国の標準データセットに含まれていないため、余力の乏しい自治体ほど機械可読化・ネット公開が後回しになります。犯人ではなく、構造を記録しています。
- 記載の訂正を受け付けます。事実と異なる点や、閲覧制度など補うべき情報があれば、お問い合わせからご連絡ください。確認のうえ訂正し、削除ではなく「いつ・何を訂正したか」を追記して残します。