僕とAIで立てたYouTube攻略の対策は、別のAIに検証させたら2つとも使えなかった。ひとつは3年前に廃止された機能を前提にしていた。もうひとつは、僕がすでにやっていて、効果は 0.47% だった。おまけに議論の土台にしていた再生回数の定義そのものが、去年の春に変わっていた。
そこから出てきた本当の教訓は、YouTubeの話じゃない。
AIは「正しいこと」ではなく「もっともらしいこと」を言う。
だからAIを増やすのではなく、AIを疑う仕組みを作るべきだ。 そしてそれは、新しいAIを買うことではなく、
役割とルールを分けることでできる。
この記事が役に立つ人
AIに仕事を任せていて、その答えを検証する方法を探している人
個人で作ったものを世に出していて、数字が伸びずに悩んでいる人
「バズるコツ」を読んでも、なんとなく嘘くさいと感じている人
先に断っておく。この記事は生ものだ。
YouTubeの仕様は2年で2回変わっている。だからこれは「2026年7月14日時点の、僕たちの検証」でしかない。半年後には、たぶん間違いになっている。
そして今日、この検証をしながら曲を1本上げた。よかったら流しながら読んでください。 この記事は、最後にこの曲に戻ってくる。
▶ なんだろね / saki♮ Lab
YouTubeショートが2578回再生された。チャンネル登録者は3人になりました。
!!ありがとうございます!!
この数字を前に、僕とAI(Claude)は何時間もかけて仮説を立てた。原因を特定し、対策を決め、「これが今日中の最優先だ」とまで言った。
その仮説を、別のAI(Claude Fable 5)に検証させた。公式の一次情報だけを使って、裏を取れないものは全部捨てろというルールで。
結果、僕たちの対策は2つとももう使えなかった。ひとつは3年前に廃止された機能を前提にしていて、もうひとつは僕がすでに実行済みだった。おまけに、僕たちが根拠にしていた数字の定義そのものが、去年の春に変わっていた。
これは、その記録だ。
何を作っているか
AIで作った曲を、YouTubeに2つの形で出している。
フル動画 4分。ジャケット画像1枚と曲。
ショート 40秒。同じジャケットに歌詞を焼いた縦動画。
ショートは伸びる。フルは伸びない。数字はきれいに割れた。
ショート 合計 1061再生 → プレイリスト保存 0件
フル 合計 116再生 → プレイリスト保存 4件
ショートは1000回再生されて誰にも保存されず、フルは116回でも4人が保存した。 保存というのは「また聴きたい」という意思表示で、音楽で唯一意味のある行動だと僕は思っている。
だと思っています…だから聴いてね。
ここから僕とAIが出した結論はこうだった。「ショートは絵の商品、フルは曲の商品。ショートに来る人は曲を聴きに来ていない」。
これは今でも正しいと思っている。問題はこの先だ。
僕たちが出した対策
登録者が増えない。2578再生あっても3人。出口がない。
そこでAIが提案し、僕が納得した対策が2つある。
対策1 ショートに固定コメントを打ち、フル動画へ誘導する
対策2 ショートの説明欄からフルへのリンクを置く
AIは「今流れている水を逃すな、時間との勝負だ」と言った。もっともらしかった。僕もそう思った。
両方とも、機能しない対策だった。
別のAIに、一次情報だけで調べさせた
ここで僕は、調査を別のAIに投げることにした。ルールを厳しくした。
採用してよいもの
YouTube公式ヘルプ・公式ブログ
中の人の実名発言(責任者クラス)
Googleの査読論文
捨てるもの
「バズる裏技」系の記事
出典のない断言
サンプル数を書いていない「検証してみた」
同じ主張が孫引きで増えているだけのもの
そして一番大事な指示。「よく言われていること」ではなく「根拠まで辿れること」だけを持ってこい。分からないものは分からないと書け。
返ってきた報告の最初の一行で、僕たちの対策は崩れた。
崩れた理由
YouTubeは、ショートのコメント欄と説明欄のURLをクリック不能にしている。 2023年8月。スパム対策として、公式が無効化していた。
つまり僕たちがやろうとしていたのは、踏めないリンクを置く作業だった。
AIは自信満々に「最優先」と言った。僕も納得した。二人で数時間かけて、3年前に終わった機能に賭けようとしていた。
じゃあ正しい導線は何かというと、ひとつだけある。Studioの「関連動画リンク」機能。ショート1本に長尺1本を紐づけられる、公式が用意した唯一の公認導線だ。
AIは言った。「全ショートに設定しましょう」。
僕はもう設定していた。
そしてその上で、こうなっている。
青焔ショート 2567再生
↓ 関連動画リンク設定済み
青焔フル 12再生 (転換率 0.47%)
公式が用意した唯一の導線を、正しく張った上で、0.47%。
これは打ち手が消えたという話ではない。原因がひとつ確定したという話だ。導線がないから流れないのではなく、導線があっても流れない。ショートを見ている人は、そもそも次を求めていない。
数字の定義が、去年変わっていた
もっと根本的な発見があった。
2025年3月31日、YouTubeはショートの「再生回数」の定義を変えた。
旧 一定時間見られた再生をカウント
新 再生が始まった瞬間にカウント(最低視聴秒数なし)
つまり今の再生回数は、指が滑って一瞬映っただけでも1回だ。従来の「ちゃんと見られた再生」はエンゲージ済み視聴回数という別の指標に分離され、アナリティクスの詳細モードに移された。
僕たちは「ショート2578再生 vs フル116再生」を並べて議論していた。公式の定義からして、別のものを比べていた。
「ショートは伸びるがフルは伸びない」という結論自体は変わらない。でも、伸び方の原因について僕たちが語ったことは、全部やり直しになった。
世間で言われていることも、ほぼ崩れた
ついでに、AIが名指しで潰していったものを挙げる。すべて公式に根拠が確認できなかったものだ。
「最初の3秒(2秒)が命」
公式が言っているのは「冒頭で注意を掴め」という一般論だけ。
3秒・2秒という数字はどこにも存在しない。
「1日◯本投稿するとアルゴリズムに優遇される」
公式発言ゼロ。むしろShorts責任者は
「いつ出すかより何を出すか」と明言している。
「投稿から最初の1時間が勝負」
公式は投稿時刻はほぼ無関係と明言。
推薦は「押し出し」ではなく「引き寄せ」で、
ユーザーがアプリを開いた瞬間に候補が引かれる。
「最初に100人にテスト表示され、そこで合否が決まる」
テスト表示(シードオーディエンス)の存在は本物。
でも人数も時間も合格ラインも一切非公開。
「100人」も「1時間」も、誰かが勝手に埋めた数字。
「ループさせるとリプレイが回ってランキングが上がる」
公式の評価信号リストに、リプレイは入っていない。
僕はこのうちのいくつかを信じていた。特に「最初の1時間」は完全に見落としていた。
当たっていたもの
全部外したわけじゃない。構造についての直感は、公式と一致していた。
僕はこう思っていた。「ショートは意図せず回ってくる。だから再生数が上がっているように見えるだけだ」。
Shorts責任者の発言は、ほぼ同じことを言っていた。長尺は視聴者がタップして「選ぶ」。ショートはスワイプで流れてくる。視聴開始に「選択」という行為が存在しない。
もうひとつ。「音楽はもう枠ができあがっていて、自分の好きな人のものしか見られない。ゲーム配信が見られるのは、人が動いていて次が予測できないからだ」。
これについてYouTubeは何も説明していない。公式データも、理由の開示もない。 でも公式事実を3つ積むと、この読みが一番筋が通る。
視聴に選択行為がない
評価はチャンネル単位ではなく動画単位
公式が保証するクロス推薦は「長尺 → ショート」の一方向だけ
ショートから長尺へ人が流れる保証は、YouTubeはどこにも書いていない。 僕がやろうとしていたこと(ショートで集めてフルに送る)は、そもそもプラットフォームの順方向ですらなかった。
そして、うちのチャンネルで一番見られている動画は、音楽じゃない。
技術動画(見守り装置を作った話) 1155再生
音楽フル 24再生
約50倍。人は「何を作る人か」を見に来ている。 曲は入口になれない。
本当の教訓は、YouTubeの話じゃない
ここまで読んで、YouTubeのノウハウを持ち帰った人も、もしかすると、いるかもと思う。でも僕が書きたいのはそこじゃない。
AIは「正しいこと」を言うのではなく「もっともらしいこと」を言う。
今回、AIが間違えた理由は明快だ。学習した時点の知識で喋っていて、仕様が変わったことを知らなかった。 「説明欄にリンクを貼ろう」は、2023年8月までは正しかった。AIはその世界のことを、自信満々に、今の話として喋った。
そして僕は、それを疑わなかった。もっともらしかったから。
これを防ぐ方法は、たぶんひとつしかない。検証する工程を、別に持つこと。
仮説を立てるAI と
検証するAI を分ける
検証側には厳しいルールを渡す
一次情報だけ
根拠が辿れないものは捨てる
分からないものは「分からない」と書く
今回、僕は同じ会社の別のAIに、この役をやらせた。同じ土俵に立たせず、審判をさせた。 そうしたら、味方だったはずのAIの提案が、半分崩れた。
ここで大事なことがある。これは「後から来たAIのほうが賢かった」という話ではない。
Claude も Claude Fable 5 も、同じ会社の同じ系統のモデルだ。性能の差で結論がひっくり返ったわけじゃない。変わったのは、渡したルールだけだった。
仮説を立てるとき、AIに渡していたもの
「この数字を見て、どうすべきか考えて」
→ もっともらしい対策が出てくる。学習時点の知識で。
検証させるとき、AIに渡したルール
一次情報だけ使え
根拠が辿れないものは全部捨てろ
分からないものは「分からない」と書け
→ 通説が全部崩れた
プロンプトを書くコツでもありますね、うっかり。
同じルールを最初から渡していれば、最初のAIも同じ結論に着いたはずだ。 今回効いたのは「賢いAIを連れてくること」ではなく、
疑う役に、疑うためのルールを渡したことだった。
だから「AIを導入したい」という話に対する僕の答えは、こうなる。AIを増やすことじゃない。AIを疑う仕組みを作ることだ。 そしてその仕組みとは、新しいモデルを買うことではなく、
役割とルールを分けることだ。
これは人間の組織にも、そのまま当てはまる。同じ人でも、審判のルールを渡せば審判になれる。金はかからない。決めるだけだ。
そして、記事は時期ものだ
もうひとつ気づいたことがある。
YouTubeの仕様は、2年で2回変わっている。2023年8月にリンクが無効になり、2025年3月に数字の定義が変わった。
なのに、検索して出てくる攻略記事の大半は、それ以前の知識のまま止まっている。「説明欄にフル版のリンクを貼りましょう」と書いてある記事は、3年前に終わった知識を、今も売っている。
世の中の記事は、時が止まっている。 システムも、見る側も、必ず変わっているのに。
だから、この記事もいずれ古くなる。2026年7月14日時点の話だ。それでいいと思っている。日付を書かない記事のほうが、よっぽど嘘つきだ。
正解が分かれば、みんなやる
最後に、今回いちばん腑に落ちたことを書く。
仮に「本当の攻略法」が見つかったとする。公開される。みんながやる。その瞬間に差がなくなって、効かなくなる。
だから公開された正解には、構造上、価値が残らない。 「2秒フック」が本当に効くなら、全員が2秒フックを付けた時点で、それは前提になる。
じゃあ何に価値が残るのか。自分のデータだ。
「関連動画リンクを設定済みでも、ショートからフルへの転換は0.47%だった」——この数字は、世界中どこにも書いていない。うちのチャンネルにしかない。誰にも真似できない。
そして、事前に当たりを見抜く方法が原理的に存在しないなら、当たりを引く方法は打席数しかない。 勝負は打席数ではなく、1打席あたりのコストで決まる。外れを安く早く出せる人だけが、100回振れる。
100本振って、当たるのは1本かもしれない。でもその1本を掘れば、1が10になり、10が50になる。僕はそう思っている。
だから今日も、ショートを1本上げた。再生数は見ない。打席だから。
この記事は、書き換えない
仕様は変わる。見る側も変わる。だからこの記事も、半年後には僕が笑う番だと思う。「2026年の夏はこんなことを言っていたのか」と。
それでいい。書き換えずに残す。 続きは新しい記事として書く。外したら外したと書くし、当たったら当たったと書く。今日みたいに、自分の間違いを晒すことになっても書く。2本並べば、変化そのものが記録になる。 1本では絶対に証明できないことだ。
次に検証したいことは、もう決まっている。
シェアされる曲と、されない曲は何が違うのか
(うちのショートは共有率が全部 0.3〜0.4% で横並びだった。
再生数は40倍違うのに、心が動いた人の割合は誰も変わっていない。
伸びしろは、たぶんここにしかない)
「エンゲージ済み視聴回数」で見たとき、あの40倍差はまだ残っているのか
(絵で止められなかったのか、そもそも表示されなかったのか。まだ分けられていない)
結果が出たら、次の記事を書く。もし気が向いたら、また見に来てほしい。
今日も朝が来たし
地球、蹴ってるし
まあ、それでいいか
うまくいっていない。登録者は3人だし、対策は半分崩れたし、信じていた通説はだいたい嘘だった。
それでも、回り続けてはいる。 転んだ記録がひとつ増えただけでも、明日の打席は今日より少しマシになる。
まあ、それでいいか。
やったことのまとめを自動で下書きに入れて確認修正してますが
時々 うち・・・って言ってるのは癖なのか、可愛いじゃないか・・・。
指摘しないで黙っておこう。



