「AIに毎月、何百万も溶かしてます」。その数字、電卓で確かめてから疑おう

高いAIを24時間ぶん回して、月に何百万も溶かしている

それを「進んでいる証拠」みたいに語る人が増えてきた。

でも、その数字はたいてい式もメーターの画面も出てこない。そして仮に本当だとしても、高いモデルを回し続けること自体が、たぶんナンセンスだ。

大事なのはモデルの値段じゃない。どの仕事に、どのモデルを指名するか

その線を引けているかだ。線を引けていれば、請求は青天井にならない。むしろ財布より先に、サブスクの上限(枠)が尽きる。知っておくと事故らない話を、電卓を叩きながら書く。

この記事が役に立つ人

AI顧問の「月に○百万使ってます、これが最先端です」を、なんとなく嘘くさいと感じている人

「サブスクに入れたんだから使い放題」と全部を一番高いモデルに投げそうな人

自分の会社の方針に「AI活用」と書いてあるけど、現場が1ミリも進んでいない人

「月百万溶かしてます」という自慢

AI系の動画を見ると、その手のコンサルが延々と流れてくる。最近よく見るのが、利用額の大きさを、そのまま実力の証明として見せるタイプだ。

ある顧問の動画では、こんな調子で言っていた。自分は1週間で数千ドル使っている。月に直せば1万ドル前後、日本円でいえば毎月100万〜200万くらいの請求が来る。アカウントも複数、このままの使い方だと最悪、月に数千万の請求になる——と。

これを

「だから自分はここまでやっている」という文脈で語る。ぶん回している人と、まだ触っていない人の差は、これから半年後・1年後に「点と地の差」以上に開く、と続く。

煽りとしては、よくできている。 数字が具体的で、大きくて、危機感を刺激する。でも、僕はこの手の数字を見たときに、まず一つだけ確かめることにしている。

その数字、式が出せますか?

電卓を叩いてみる

いま高いモデルの料金は、公開されている。一次情報だ。100万トークン(処理量の単位)あたり、こうなっている。

一番高いモデル  入力 100万で 10ドル / 出力 100万で 50ドル

その一つ下    入力 100万で 5ドル / 出力 100万で 25ドル(ちょうど半額)

つまり「一番高いモデル」が、従量課金の天井だ。これを丸一日、止めずに回したらいくらか、電卓を叩く。

仮に、重いエージェント作業を想定して、出力を1分あたり5000トークン生成し続けたとする。

出力 5000 × 60分 × 24時間 = 1日 720万トークン

出力代 720万 × 50ドル/100万 = 1日 360ドル

これに入力代が乗る。エージェントは毎回、それまでの文脈を読み直すので、入力トークンは出力より多くなりがちだ。ただしここが厄介で、同じ文脈を読み直すときはキャッシュが効いて、入力代が10分の1になる。効くか効かないかで、入力代は5倍ぶれる。

だから正直に幅で書く。1日ざっくり 400〜700ドル。月に直すと 1万2000〜2万1000ドル、日本円で 180万〜320万円くらい(1ドル150円で計算)。

「毎月100万〜200万」。桁は、ちゃんと合う。

ここが大事なところだ。数字が嘘だと言いたいんじゃない。桁は合っている。 一番高いモデルを一人で丸一日ぶん回せば、月に100万台には届く。問題は別のところにある。

この計算式を、一度も見せない。 前提も、キャッシュが効いているかも、どの仕事に使ったかも、メーターの画面も。数字だけをふわっと言って、次のカットに進む。

式が出せない数字は、疑っていい。

そもそも、24時間回す必要がない

桁が合うと分かったうえで、次の話をする。仮に本当に月に何百万も使っているとして、それは自慢になるのか。

僕の答えは、ならない。むしろ線を引けていない証拠に見える。

別の記事で、同じことを実際に測った。

値段が10倍違う3つのモデルに、まったく同じ指示書で同じ40枚の表を読ませた。

結果、「この表は何を測っているか」「母数は何人か」といった判定は、3モデル完全に一致した。10倍の値段差は、判定にはまったく現れなかった。差が出たのは、説明の丁寧さだけだ。

ここから引ける線はシンプルだ。

<重要>

判断の規則を、事前に文章で書き切れている仕事 → 安いモデルで同じ答えが出る

規則を書き切れていない仕事(=規則そのものを発見する仕事) → 高いモデルが要る

つまり高いモデルは、「規則の発見」に使う道具だ。すでに手順が決まっている反復作業に一番高いモデルを24時間あてるのは、電卓で足りる計算に、スパコンを時間貸しで借りるのに近い。速くもならない。判定も変わらない。変わるのは、請求だけだ。

「ぶん回して差をつけろ」は、ここを飛ばしている。ぶん回すこと自体が偉いわけじゃない。どこに高いモデルを指名して、どこを安く済ませるか——その判断こそが差で、それは利用額には出てこない。

そして——ここが皮肉だ。「全部自動化して、ぶん回している」。そのぶん回せる中身は、たいてい定常業務だ。自動で回せるというのは、手順がもう決まっているということ。手順が決まった作業は、さっきの線でいえば「規則を書き切れている仕事」——一番安いモデルとスクリプトの領域だ。すさまじい量のPDFを機械的にさばく、そういう仕事にこそ、一番高いモデルは要らない。ぶん回す量が多いほど、それは線を引けていない自白に近い。 一番高いモデルを、一番あてなくていい仕事にあてているのだから。

高いモデルの出番は、量じゃない。

「それにしかできないこと」——規則がまだ無くて、判断がその場で要る所、そこだけだ。

僕たちのやり方だと、その請求は来ない

※僕とくーです

同じ量の作業をしても、青天井のメーターが回らない。理由は三つだ。

一 サブスク一本にする。

一番高いモデルは、少し前からサブスクの枠内で使えるようになった。上位プランに含まれ、週ごとの利用上限の一定割合まで、追加の従量課金なしで使える。枠内は、もう払った金の範囲だ。そこで何回叩いても、別途の請求は来ない。

二 重い反復作業は、そのモデルで回さない。

動画1000本に属性タグを付ける、統計シート1160枚をカタログにする——こういう「規則が決まっている大量作業」は、一番高いモデルに手打ちで投げたりしない。スクリプトを書いて、安いモデルに一気に叩かせる。人が判断する必要のある所だけ、高いモデルを指名する。

三 だから、従量メーターがそもそも回らない。

青天井になるのは「全部を一番高いモデルに、手で、24時間投げ続ける」からだ。その使い方をしていない。

差を、表にするとこうなる。

高いAIを複数アカウント分・24時間ぶん回す → 最悪 月に数千万

僕たちのモデル サブスク+「どの仕事に高いAIを指名するか」の判断 → 月2〜3万の固定+ほぼタダのスクリプト

差は、50倍のコストじゃない。「線を引けているか」だ。

知っておくと事故らない話——先に来るのは、請求じゃなく上限

サブスクに切り替えると、コストの構造が根っこから変わる。ここは、入れる前に知っておいたほうがいい。

従量課金なら、使いすぎると財布が先に悲鳴を上げる。月末に何百万の請求が来る。だから怖い。

サブスクだと、先に尽きるのは枠(quota)のほうだ。一番高いモデルは、サブスク内では週次上限の一定割合まで、と決まっている。つまり枠内なら実質タダだが、タダだからこそ、枠が先に尽きる

これを知らずに「サブスクに入れたから使い放題だ」と全部を一番高いモデルに投げると、こうなる。月の半ばで枠が尽きて、いざ肝心な判断をしたいときに、一番賢いモデルが使えない。 反復作業で枠を溶かしてしまったからだ。

だから「重い所だけ高いモデル」は、財布のためだけの話じゃない。限られた枠を、判断に集中させるためでもある。安いモデルとスクリプトに任せられるものを全部そっちに逃がして、枠は「規則の発見」だけに使う。これが、上限を先に迎えないための線引きだ。

数字は、二重にも三重にも確かめる

この記事に出した数字を、どう確かめたか書いておく。

一 価格は、公式の料金表から取った(一次情報)。人づての「らしい」ではない。

二 電卓の式を、途中まで全部見せた。「1分5000トークン」と、前提にラベルを貼った。

三 キャッシュで5倍ぶれる、という自分の穴も先に申告した。

二重三重に確かめて、なお幅でしか出せない。 それが正直な数字というものだ。

よくあるコンサル系は数字を1回言って、次のカットに進む。式も、前提も、メーターの画面も、一度も出てこない。二重三重に確かめて幅で出す数字と、一度も確かめさせずに言い切る数字。並べれば、どっちを信じていいかは決まる。

だから、こうしてほしい

まとめる。

高いAIを24時間回すこと自体は、偉くない。どこに指名するかの線が偉い。賢いというほうがいいかな。

サブスクなら、財布より先に枠が尽きる。反復作業で溶かすな。

出せない数字は、疑え。正しい使い方は、自分で実証しろ。

実証は、難しくない。同じ入力を、値段の違う2つのモデルに投げて、答えの差分を取るだけ。無料で30分だ。 コンサルの見出しを買う前に、まずこれをやったほうがいい。自分の仕事で、高いモデルが本当に要るのかどうかは、他人の動画じゃなく、自分の数字でしか分からない。

ここから色が変わります。

最後に、会社でAIの方針を決める側へ、ひとつだけ。

AIを一度も触ったことのない人が、会社の方針に「AI活用」という言葉だけ入れると、現場ではしばしば仕事が増える。上司に分かる資料、上司が説明しやすい資料を、部下が別に作ることになるからだ。それはAIの導入じゃなくて、「AI」という言葉の導入だ。

「なぜ簡単に使えないのか」には、ちゃんと理由がある。ガバナンスというハードルは本物で、越えるのは地味で環境ごとに違う作業だ(この「触れない壁」は、別の記事で正面から書いた)。だから、1時間かけてプロンプトの打ち方を読むより先に、やることがある。

自分の仕事のうち、AIが代われるものが何個あるかを、毎日数える。そして、とにかく触る。 触ったことのある人だけが、線を引ける。そして線を引ける人だけが、毎月何百万の自慢を、電卓で笑える。

できないならいつまでも役職だけもってないでさっさと引退してください。迷惑なんで、生産性おちるんで。それが嫌ならwin95/98が出た時にもどって、学んでください。1時間の動画を見ることよりも、安全な環境で10分さわってください。これだけで、部下が言っていることもわかるし、あなた方が長年ためた経験とあわさって、トップダウンですすみます。これは、特定企業の話ではなく、DX DX言っていた時も、

自治体、企業ともに、同じ課題があって、差が出たんじゃないですかね。少なくとも僕はこの目でどちらも見てきました。ボトムアップの成功例もありますが・・・

辛口ですが、

①若手が困ります→いちいち説明する時間が無駄なんです

②予算取りに時間がかかる→これも↑と同じ

この時間で何ができますか?計算しなくても見えると思います。

任せるときは、多少自分もやってから任せた方がいいよって話です。